アメリカの実態
- 作者: 越智道雄,町山智浩
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/01/16
- メディア: 新書
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著者:越智 道雄, 町山 智浩
■評価:可
情報:○ 新規性:△ 構成:○ 日本語:○ 実用性:×
難易度:易 費用対効果:△ タイトルと内容の一致:○
お勧め出来る人・用途 :米国人が、WASPと黒人というステレオタイプの枠に収まっていると思い込んでいる人・現在のアメリカの事情を知る
お勧めできない人・用途:オバマという人物について、オバマがアメリカをどのように変えるかについて興味がある人・これからのアメリカについての示唆を得る
■所感
可もなく不可もなく。
米国人(中でもWASPと言われるような「白人」とそれに虐げられてきた「黒人」)をステレオタイプとしてしか理解していなかった人(私もその一人)にとって、
本書で明かされる米国人の実態は、ある種の驚きをもって受け止められるだろう。
良く言われることだが、「まじめで実直で勤勉な」日本人、というようなステレオタイプに当てはまる日本人なんて初めから存在しないように、
「常に前向きで社交性があり、開拓者精神を持っていて、日曜日には教会に行く」アメリカ人、というようなステレオタイプに当てはまるアメリカ人も初めから存在していない。
それどころか、我々が「白人」「黒人」、少し知識のある人だと「ヒスパニック」「ユダヤ人」「アジア系」といった「くくり」で分類できるような
単純な構図に落としこめるほど彼の国の実情は明快ではない。
アメリカが以上のような複雑な事情を抱えていること、それが今回の「オバマの勝利」に結びついたことを理解出来る、
という点では、本書から学ぶべきところは全くないわけではない。
特に、「オバマはアメリカ人になるためには大統領になるしかなかった」「オバマは(その出自と大統領になったという事実に於いて)『スーパーマン』と境遇が類似している」
といった指摘は、言い得て妙である。
しかし、本書の論点は分散しており、分析にも特に深みがない。
時に表層だけをとらえて、「こうだ」と決めつけてしまう安易な指摘も散見される(勿論研究書ではないのでそこまで厳密になる必要はないが、掘り下げ不足)。
また、アメリカの「これから」についての前向きで有効な提言もほとんどない。
「アメリカってこうだよね」「だからアメリカって駄目なんだよね」という調子である。
本人たちがあまり真剣に「どうあるべきか」と議論を交わしたりしている場面はほとんどない。
従って、本書はあくまで現在のアメリカの実態を知りたい、比較的余裕のある人向けの本であり、アメリカについての本格的な考察を求めている人には向かない。
読んでも損をすることはないが、必読の書ではない。
(アメリカの地方行政に携わる人ならまだしも)
ちなみに、アメリカの保守主義について、その源流からブッシュ「ネオコン」に至るまでの経緯を著した書籍としては、以下の本がある。
- 作者: 会田弘継
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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著者:会田弘継
新書と撰書ではコストに倍近い差があるが、この本を読むくらいならよほど上記の本を読んだ方が(少なくともアメリカの政治思想については)良く理解が出来る。
私ならこちらの方をおすすめする。