悩まざる者書くべからず
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 雑誌
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■評価:ー
読了は尾野真千子さんのインタビュー及び芥川賞2作品と選評。
以下に芥川賞のそれぞれの作品についての評価と所感を記す。
・田中慎弥 「共喰い」
■評価:不可
物語:× 情報:× 斬新さ:× 意外性:△ 含意の深さ:× ムーブメント:× 構成:△ 日本語:○
お勧め出来る人 :−
お勧めできない人:退屈な人
■所感
読んでいてただ不快感だけが残る、駄作。
誉めるべきポイントがどこにも見当たらない。
作品の「完成度」だけ見るならば確かに「芥川賞」級ではあるが、肝心の物語が××。
何が1番いけないかって、主人公の心の葛藤や苦悩があまりにも浅いこと。
そういう「抗いがたい衝動」のようなものを書きたかったのかもしれないが、それであれば見習うべき作品は(それこそ石原慎太郎さんのように)いくらでもあるように思える。
また、登場人物の人物像があまりにも薄っぺらすぎる。
特に主人公の父親に顕著だが、そんな単純な作りで出来ている人間なんていません。
石原さんが「自我の衰退」と嘆くのも無理はないなと感じた。
円城 塔 「道化師の蝶」
■評価:良
物語:△ 情報:○ 斬新さ:△ 意外性:○ 含意の深さ:○ ムーブメント:× 構成:◎ 日本語:○
お勧め出来る人 :形而上学が好きな人
お勧めできない人:難解な理屈が苦手な人
■所感
評者が述べているように「安部公房」的な作品。
従って読者の感じ方としては好きと嫌いに2分されることが想定される。
純粋に物語を楽しみたいという人にとっては、ストーリーラインを追うことが難しい本書とはあまり相性がよくないだろう。
記述された内容を元に純粋な物語として楽しむことも出来なくはないが、それにしてはノイズが多すぎる。
本書は示唆に富むもので、そういう思索に耽ることが好きな人を喜ばせるような要素がちりばめられている。
ただ、「結局なんなの」という問いに対して、本書は回答を用意していない。
否、読んだ人の数だけ正答があるという表現の方が正しいか。
哲学は思想と異なり、ただひたすらに問いを続ける行為である。
本書を「読む」こともまさにそのような行為以外のなにものでもないが、その行為自体を楽しめる人を歓待するだけの十分なキャパシティを備えている。
一読の価値はある。
しかし確かにこれは芥川賞として良いものか、そもそも純文学の立場から認めて良い「作品」であるのかは大いに物議を醸しただろう。
■読了日
2012/03/18