まるで受験参考書

書名:世界でいちばん簡単なサーバーのe本―サーバー構築の基本と考え方がわかる本
著者:金城俊哉


■評価:良
  情報:○ 新規性:△ 構成:○ 日本語:○ 実用性:○
  難易度:普 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:○
  お勧め出来る人・用途 :「基本情報技術者」レベルの知識を持っており、Windowsサーバーについて一通り学習したいと思っている人・Windowsサーバーを実際に構築しながら知識を身につける
  お勧めできない人・用途:サーバーについてまったく知識がない人・サーバーについて1から学習する



■補足(2010/01/05)
 本書はWindows XPWindows Vistaなどクライアントマシン・OSでのサーバ構築を前提として書かれている。
 Windows serverなどを利用した本格的なサーバーマシンのセットアップについては触れられていないので注意。
 (Windows serverなどを利用したサーバーについての入門書は、例えば前掲の『これだけは知っておきたい サーバの常識』など)



■所感
 いきなり上記の評価と矛盾するようなことを述べるが、情報に関しての本書の評価は、"×"である。
 理由は、「あれもこれも」盛り込みすぎ、という点にある。
 おそらく、「あれも大事、あ、これについても言及しておかなくては」という感じで書き進めていった結果、このようなことになってしまったのだと推察できるが、あまりにも情報が多く盛り込まれすぎていて消化不良になる危険性がある。
 では何故上の評価では"○"にしているのかと言えば、「必要な情報がほとんど全て盛り込まれている」というその点それ自体は望ましいことだから、である。
 問題は、それらが「言いっぱなし」で、フォロー(例えば用語の補足説明)が十分でない、ということである。
 これでは初心者はものの見事に躓いてしまう。


 本文の見やすさを維持するならば、脚注で・・・とも思ったが、そもそも本書は脚注も情報で溢れているのだ。
 つまるところ「情報過多」。
 著者の「思い」は伝わってくるのだが、読む人は結構なエネルギーを消耗させられるので、挫折してしまう人も多いのではないか。
 (意外に皆適当に読み飛ばしてしまうから問題にならない、というようなことになるのだろうか?私の杞憂?)
 かといって、「実用的な入門書」を標榜している以上、操作画面のキャプチャなどを消すわけにもいかず、ページ数をこれ以上増やすわけにもいかないだろうから(300頁を越えているので既に入門書としてはぎりぎりのライン)、1つ方向性としては情報をそぎ落として読みやすさをとる、という道があったのかもしれない。
 だが、それではもったいない・・・と思ったのかどうかはわからないが、おかげで中途半端な本となってしまっているのは大変残念である。
 (本当に説明すべき用語をしっかりと説明できていない箇所も散見される)


 それでも私の総合評価が「良」なのは、少なくとも私のような「一応IPAで基本事項は勉強しました、でも実践に応用できるような知識に結びつけられていません」という段階の人間にとって、本書が最良のテキストになるからである。
 文字通り「e本」なのだが、本当の意味での「初心者」は返り討ちに遭う危険性があるので、見た目に騙されずしっかりと気合いを入れて本書に取り組むことをお勧めする。


■読了日
2009/11 半ば頃