まずは正しい現状の把握から

日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

書名:日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由
著者:久手堅憲之


耳に痛い話満載の貴重な本。
能力のないプログラマとか、勉強しないプログラマだとか、もうひぇぇぇぇーっという感じになるが、事実なので受け止めなければならない。


日本のソフトウェア会社は「人材派遣業」と化している。
発注の見積もりが未だに「人月」単位で行われている。
日本人のIT業界関係者は英語を勉強しない。
などなど。
この国のこの業界が抱えている問題はほとんど全て列挙されているといっていいだろう。


この本の特徴としては、だめ出しの範囲を受注先に限らず、発注元である「ユーザー企業」に及んでいることである。
この国のIT業界の駄目っぷりは、駄目な組織・環境の中にある駄目なエンジニアらが作るような駄目システムを、自ら検証することなく受け入れている「ユーザー企業」の存在なくしては語れない。
ただし、そのような駄目「ユーザー」も、昨今の厳しい競争の中で、さすがにこれまでのような駄目っぷりを続けているわけにはいかなくなった。
「ユーザー」はこれから賢くなるだろうし(国など公的な部門には賢くなってもらわなければ困る)、仕事はますます海外へ流出するだろうから、編者がまとめたとおり、この国のIT業界の未来は暗い。


ただし、本書は徒に悲観論を並べているわけではない。
現状をしっかりと見据えた上で、どうすれば生き残っていけるのかについても具体的な提案を行っている。
プログラマには自分が成長出来ない環境からは離れて、(出来れば)独立することを勧めている。
ベンダーには、この国の持つ強み(環境・福祉など)に重点を置いた分野に特化することを勧めている。
これだけでは具体的なビジョンは見えてこないが、少なくてもどの方向にこの国のIT産業が進んでいくべきかについての方向性は見えてくる。


既に頭打ちの感があるこの業界だが、激しい競争にさらされている「ユーザー企業」が「賢く」なるにつれて、これまで「何となく」生き残ってきた企業も退出を余儀なくされるだろう。
やるべきことは解っている。
後はどのくらい必死になれるかだろう。