成功にも必然はある

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)

書名:「R25」のつくりかた
著者:藤井 大輔


今年の新書(暫定)No.1といえるほどの良書。
帯の「必読」は伊達ではない。
ビジネスパーソン必読。


リクルートはやはりすごい。
昨年の『Hot Pepperラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方』といい、今年の本書といい、リクルートで成功した人の話は本当に圧倒される内容ばかりである。
(通常は成功談ほど役に立たないものはない)
「そこまで考えるか」「ここまで突き詰めるか」と言わせるような徹底ぶり(勿論、後知恵も中には有るだろうが、非自覚的であったとしても凄いことには変わりはない)には本当に脱帽させられる。


R25に関しては、実は既に昨年出た『フリーペーパーの衝撃』という新書でそのコンセプトを勉強しており、ある程度は解ったつもりになっていたのだが、まだまだ隠された要素はたくさんあったということが本書を読んで明らかになった。
特に著者の行った「M1層の分析」は秀逸で、まさにマーケティングの鏡であるといって過言ではない。


所詮、メガヒットなんて運、なんて思っている人は、本書を読んでその考え方を改めた方がよい。
確かに、運の要素は大きい。
時流、というものもあるし、何がきっかけとなって何がどうなるかといったことは誰にも解らない。
しかし、「絶対にヒットする」ビジネスモデルが存在しないのとは裏腹に、「絶対にヒットしない」「確実に失敗する」ビジネスモデルは存在する。
本書で著者が最初に想定した読者像は完全に間違っていた。
仮にその仮説のままR25をテスト創刊していたら、惨憺たる結果をもってその企画はおしまいになってしまっていただろう。
100%はありえない。
しかし、0はどうあがいても0なのである(それこそ重力の法則が逆さまにでもならない限り売れることのない商品はこの世にごまんと存在する)。
いかに0を0より大きい数字にするか、そしてその可能性を僅かでも上げられるか。
これこそがビジネスパーソンの成すべき努力である。


R25のヒットは、端から見れば単なる「偶然」にしか見えない。
しかし、本書を読んでその詳細を知った者にとって、それはもはや「必然」であったとしか考えられなくなるだろう。
著者の行ったリサーチ、検討はそれほど徹底している。
そしてそれらが正しかったことはその後の数字、及び読者の生の声が支持している。


ものが売れない、企画が通らない、消費者が解らない、と嘆いている人、本書で著者が行ったような努力をしていますか?
本書を読めば、自分の努力がいかに不徹底であったか、まだ出来ることがあったのによく解らない「運」のせいにしてしまっていたか、ということがよく解る。
本当に成功したいと思うならば、本書の著者ぐらいの努力は試みるべきである。
奮起のきっかけを与えてくれる、良書。
繰り返しになるが「必読」のキャッチは伊達ではない。


[2009/05/06 追記]
本書から学ぶべき事項として、「定量調査だけでなく定性調査も行うべき」という点と、「アンケート調査の結果を鵜呑みにしてはならない。M1世代は素直に本音を語らない」という点を書き忘れていたので追記する。
いずれも(マーケティング)リサーチをする上で非常に重要なポイントである。