言葉遣いは思いやり
- 作者: 外山滋比古
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2008/03/26
- メディア: 文庫
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著者:外山滋比古
■評価:良
情報:○ 新規性:○ 構成:△ 日本語:○ 実用性:△
難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:△
お勧め出来る人・用途 :「正しい」言葉の使い方に興味がある人・本来あるべき日本語の礼儀作法について学ぶ
お勧めできない人・用途:人間関係を円滑にする言葉遣いを学びたいと思っている人・相手との関係を良好に保つための言葉の使い方について学ぶ
■所感
本書は位置づけとしては「実用の書」であるが、内実はどちらかというと「原理・原則」の色合いが強い。
従って、言葉遣いについて「本来はこうこうであった」というような起源やあるべき姿についてはいろいろと興味深い内容が含まれているが、それら「原理・原則」をそのまま実践することで人間関係が本当に円滑なものになるかどうかはまた別の話となる。
逆に「原理・原則」にこだわるあまり、「空気の読めない」言葉遣いで返って気まずくなる危険性すらある。
ただ、著者である外山さんのスタンスは、いわゆる「正しい日本語」を声高に主張するがちがちの保守的な人のそれとはかなりことなっている。
例えば、一般に、間違った「バイト言葉」とされている「よろしかったでしょうか」という言葉に関しては、「このように考えるとあながち間違っているとも言えない」という評価をしている。
ただし、「私的」というような明らかにどうしようもない言葉については妥協を許さない。
こだわるべき所にはこだわるが、「こうあるべき」にがちがちにこだわって感情的にならない。
即ち柔軟性があるのである。
著者が広く支持されている理由の一端がここにあるのではないか。
本書にはまた、
相手を讃え、ほめるのは、しばしば丁寧な敬語にまさる
といった、はっと気づかされるような鋭い指摘もある。
この辺りは長年「言葉遣い」について考察してきた著者ならではであり、非常に有益である。
冒頭述べたように、本書は実用の書ではない(すぐに実践できるアドバイスもいくつか含まれてはいるが)。
しかし、言葉の由来について知っておくこと、本来「正しい」言葉遣いが何であったかについて知っておくことは、言葉遣いを考える上で有益な知識である。
さすが外山さん、示唆に富んだ質の高い書である。
目的へのこだわりがなければ、一読の価値は十分。
■読了日
2010/10/17