働く阿呆

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

書名:モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
著者:ダニエル・ピンク(大前研一:訳)


■評価:良
  情報:○ 新規性:△ 構成:○ 日本語:○ 実用性:◎
  難易度:やや難 費用対効果:◎ タイトルと内容の一致:○
  お勧め出来る人・用途 :人は「アメとムチ」で制御できると思い込んでいる人・人間を動かす原動力の本質について知る
  お勧めできない人・用途:『リナックスの革命』や梅田望夫さんの著作などでオープンソースに携わっている人間をモチベートしているものが何であるか知っている人・新しい「モチベーション」についての気づきを得る


■所感
 評価にも付けてあるように、本書で述べられていることは実は新しいことではない。
 <モチベーション2.0>の弊害、即ち、
 「金銭的インセンティブは必ずしも効果を成さないばかりか返ってモチベーションの妨げになる」、
 また、<モチベーション3.0>の効用、即ち、
「本当に好きなこと人の役に立てているというフィードバックを得られていることをしているとき、人は最大限の力を発揮し最高の満足を得ている」
 といった本書の指摘は、実はこれまでも何度も述べられてきたことである。
 近年で有名な著作で思いつくだけでも、『リナックスの革命』や『スウェイの法則』、梅田望夫さんの諸作(例えば『ウェブ時代をゆく』)などがこのことに言及している。

リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神

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あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則

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ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

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 では、本書の価値とは何か。
 2つある。
 1つは<モチベーション2.0>に対する冷静で的確な考察である。
 単にそれを非難するだけではなく、むしろ状況においてはそれが有益であることを認めているという点で本書は優れた批判の書である。
 しかも(この辺りがダニエル・ピンクさんの細部へのこだわりだが)、それを効果的に活用するための場合分けと注意点についてまで記してある。
 (このフローチャートだけでも、本書には十分な価値があるといって良いほど良くできている)
 

 もう1つ、本書の優れている点はその「フレームワーク」の提示の仕方である。
 "3.0"というネーミングのセンスは問わないとして、本書で示されている<モチベーション3.0>のフレームワークは大変明瞭で、これまで漠然としか見えていなかったその輪郭をはっきりとさせたといっても過言ではない。
 『フリー』がその新奇性よりも「フリーの4つのビジネスモデル」というフレームワークで一大センセーショナルとなったのと同様、本書の利点もそのフレームワークにある。
 

 さすがはビジョナリーが育つ国。
 内容がだいたい予測できる人でも、一読の価値ありである。


■読了日
2010/09/14