持たざる者は奪う者となる
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/11/06
- メディア: 文庫
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著者:吉田修一
■評価:可
物語:△ 情報:− 斬新さ:× 意外性:△ 含意の深さ:△ ムーブメント:△ 構成:○ 日本語:○
お勧め出来る人 :自分は誰にも迷惑をかけずに生きていると思っている人
お勧めできない人:太宰治の『人間失格』を読んだことがある人
■所感
どこかで見たことのあるテーマだなと思ったら、何のことはない、『人間失格』だった。
よく言えば換骨奪胎、ストレートに表現すると「出来の悪い焼き直し」。
帯の宣伝文句からだいぶ期待をしたのだが、完全な期待はずれ。
愛する者のために人は何度でも立ち上がる
ドコニソンナバメンガアリマシタカ?
登場人物にしても、そんな人間はいないだろうという「どこからどう見ても救いようのない、
完全無欠な『悪人』」、「これはどう考えても読者におもねっているとしか思えない、(読者にとって)情状酌量の要素がありありと示されている『悪人』(主人公!)」というように人間の複雑さ・心の奥深さがない薄っぺらい人間ばかり描かれている。
肝心の物語も読者をまったく裏切ることなく、非常にパターン通りの進み方をする。
結末まで含めて、まるで意外性がない。
(個人的には品がない表現が多いこともマイナス評価)
唯一評価できる点があるとすれば、「人の心を踏みにじることがいかに『罪』であるか」を読者に感じさせるような内容となっていること。
本書で問われているテーマは有名な太宰治の『人間失格』が打ち出しているので(或いはアンドレ・ジイドの『背徳者』)、費用対効果も含めて、そちらを読む方をお勧めする。
■読了日
2010/10/21