万人に開かれた可能性であるために
ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)
- 作者: 梅田望夫,飯吉透
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/09/08
- メディア: 新書
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著者:梅田望夫, 飯吉透
■評価:良
情報:◎ 新規性:△ 構成:△ 日本語:○ 実用性:△
難易度:やや難 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:○
お勧め出来る人・用途 :MITのOCWなどオープンエデュケーションの現状と未来に興味がある人・オープンエデュケーションの現状や課題を分析し、その可能性を考察する
お勧めできない人・用途:Web2.0としてのオープンエデュケーションに興味がある人・Web2.0におけるオープンエデュケーションの位置づけを考察する
■所感
"Web2.0"の話を期待して読んだ人には期待はずれになるだろう。
今回はその話はなし。
(最近梅田さんはあまり"Web2.0"を口にしなくなった)
同じ教育者でも前回の齋藤さんとの対談が、あまり実りのあるものにならなかったのに対して、今回の飯吉さんとの対談ではある一定の成果が出ているように感じた。
- 作者: 齋藤孝梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 新書
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1つは対談のテーマを「オープンエデュケーションの可能性」という1点に絞っていること。
もう1つは、お互いに「シリコンバレー精神」を共有していること(そのためその点に於いての議論はなく、そこから何かを上に積み上げていくことに成功している)。
MITのOCWに関しては、日本における"Web2.0"の火付けとなった梅田さんの『ウェブ進化論』で既に紹介されているが、その時点での結論は「教授達の既得権を手放さない保守的な態度で挫折した」となっていたため、「ああ、やはりこの点を克服しないと先に進まないのだな」と思っていたが、最近はまた盛り上がって来ているらしい。
やはり、「情報は自由になりたがる」ものなのだろうか。
本対談は、梅田さんが紹介した羽生さんの言葉「知の高速道路」(誰もが独学で「プロ」一歩手前になることが出来るくらいウェブの情報が充実し整備されている状態を表した言葉)について掘り下げた内容となっている。
そこに秘められた可能性、特に「知を求める全ての人に最高の教育を」という理想に近づくための課題とそれを解決する方法の模索が、本対談にて語られている。
それはまだまだ先の話のように思えてしまうが、それでもそう遠くない未来に実現が可能なのではないか、とも感じさせるような兆しを感じることが出来る。
本書はまた、知識を身につけそれを自らのものとするためのヒントが示されている。
例えば梅田さんの「やはり何らかの強制のようなものが必要なのではないか」という指摘は非常に大切な指摘だと思う。
ウェブでそれをいかに実現していくか。
オープンエデュケーションが多くの人にとって価値あるものとなるための1つ大きな課題であろう。
格差是正やこれからの教育について考察したい人にお勧めの1冊。
それにしても、梅田さんの「僕らは『グローバルであること』を当たり前のものとして捉えていたが、それはシリコンバレーにいたからで、多くの日本人にとってはそれは特殊なことであったということに気がつかなかった」という内容の発言が印象的だった。
梅田さんと他のウェブを語る日本人との温度差は、ここにあったのか、と理解すると共に、これは憂慮すべき現実であると感じた。
我々はもっと世界に出て行かなければならない。
■読了日
2010/10/15